MOVEMENT
創作版画
Sōsaku-hanga
1900s–1960s
日本
収録作家 49人
一枚の版木に、一人の人間の意志だけを刻みつける。彫るのも、摺るのも、構図を考えるのも同じ手。それが創作版画の出発点にあった考え方である。それまでの浮世絵は、絵師が下絵を描き、彫師が板を彫り、摺師が色を重ねるという分業で成り立っていた。山本鼎らはこの体制に疑問を投げかけ、版画を絵師個人の表現として作り直そうとした。自画・自刻・自摺という言葉が示す通り、版画を油絵や日本画と同じ「作家の芸術」に引き上げることが目指されたのである。
背景には、西洋から入ってきた個人主義的な芸術観と、写実を重んじる洋画教育の広がりがあった。工芸品や商業印刷として扱われがちだった版画の地位を、絵画と対等な表現媒体に押し上げようとする意識が、若い作家たちの間に育っていった。川上澄生は南蛮趣味や異国の風物を独特の稚拙みのある線で刻み、素朴さの中に強い個性を宿した。北岡文雄は都市や自然の風景を、版木の質感を生かした落ち着いた色面でとらえ、後進の育成にも力を注いだ人物として知られる。
戦後になると、この運動はさらに抽象表現へと展開していく。加納光於は、具体的な形象から離れ、版木の物質性そのものを探るような画面を作り、版画を絵画的思考の実験場に変えていった。合田清のような明治期の先駆者から、戦後世代の抽象的な仕事まで、創作版画は一貫して「版という技法をどう自分の言葉にするか」を問い続けてきた運動だといえる。
いま作品を見るときは、量産される複製物としての版画ではなく、一人の作家が構想から仕上げまで責任を負った、いわば一点物に近い版画として向き合うとよい。板の木目や彫りの荒さ、摺りむらまでもが、作家の手の痕跡として残されている。その痕跡の生々しさこそ、この運動が版画にもたらした最大の贈り物である。
この運動の作家
駒
浜
恩
平
山
川
石
石
加
戸
日
畦
斎
清
関
ブ
上
丸
北
合
大
小
山
岩
平
日
木
木
柄
永
河
浜
深
清
白
石
秀
稲
織
芳
若
谷
谷
鑿
長
門
香
高
黒
駒井哲郎
1920–1976
浜田知明
1917–2018
恩地孝四郎
1891–1955
平塚運一
1895–1997
山本鼎
1882–1946
川上澄生
1895–1972
石井柏亭
1882–1958
石井鶴三
1887–1973
加納光於
1933–
戸張孤雁
1882–1927
日和崎尊夫
1941–1992
畦地梅太郎
1902–1999
斎藤清
1907–1997
清宮質文
1917–1991
関野準一郎
1914–1988
ブブノワ, ワルワーラ
1886–1983
上阪雅人
1877–1953
丸山浩司
1953–
北岡文雄
1922–1994
合田清
1862–1938
大西伸明
1972–
小川龍彦
1910–1988
山中現
1954–
岩田覚太郎
1902–1999
平川清蔵
1897–1964
日本版画倶楽部
木下泰嘉
1957–
木和村創爾郎
1902–1973
柄澤齊
1950–
永瀬義郎
1891–1978
河内成幸
1948–
浜西勝則
1949–
深澤幸雄
1924–2017
清宮彬
1886–1969
白井昭子
1935–2001
石崎重利
1901–
秀島由己男
1934–2018
稲田三郎
1902–1970
織田一磨
1882–1956
芳野太一
1960–
若月公平
1956–
谷中安規
1897–1946
谷口董美
1909–1964
鑿の会
長谷川勝三郎
1912–2001
門坂流
1948–2014
香山小鳥
1892–1913
高橋太三郎
1904–1977
黒木貞雄
1908–1984
いま見られる展覧会
この解説は ArtNote 編集部が執筆しています。
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