MOVEMENT

日本画

Nihonga
1880s– 日本 収録作家 128人

岡倉天心と、彼が育てた画家たちの試みから話を始めたい。西洋の油絵が急速に流入した明治期、日本の伝統的な絵画は「旧派」として退けられかねない立場に置かれていた。天心はこれに抗い、東京美術学校や日本美術院を拠点に、水墨や大和絵の技法を受け継ぎながら、西洋画の写生法や空間表現を取り入れた新しい絵画を模索させた。日本画という呼称自体、洋画と区別するために生まれた言葉であり、それはこの運動が最初から「対比のなかで自己を定義する」宿命を負っていたことを示している。

技法の面では、岩絵具や墨、絹本や和紙といった伝統的な画材を用いながらも、陰影や遠近法、色彩の重なりを工夫し、平面的だった旧来の絵画に奥行きと質感を持ち込んだ点が革新だった。下村観山や今村紫紅は朦朧体と呼ばれる、輪郭線を弱めて空気感を出す表現を試み、批評家からは「輪郭のない絵」と揶揄されながらも、次第に新しい日本画の可能性として認められていった。上村松園は美人画の伝統を引き継ぎつつ、女性の内面をより繊細に描き出し、その息子である上村松篁は花鳥画に独自の写実を加えた。

この運動が特異なのは、百年以上にわたって途切れずに続き、その都度時代の課題を引き受け直してきた点にある。戦後には中村岳陵のように新しい主題や構図を試みる画家が現れ、近年では三瀬夏之介や不動立山、中村ケンゴといった作家たちが、伝統素材を用いながら現代的な視覚感覚や社会的な題材を扱っている。パンリアル美術協会のような戦後の抽象的な試みも、日本画という枠組みの内側での実験だった。

展示室で見るときは、絵具の粒子が光を受けてきらめく質感や、余白の使い方に注目してほしい。西洋画の油彩とは異なる、乾いた発色と重なりの美しさこそが、この運動が守り続けてきたものである。

この運動の作家

横
横山大観
1868–1958
岡
岡倉天心
1863–1913
竹
竹内栖鳳
1864–1942
上
上村松園
1875–1949
前
前田青邨
1885–1977
橋
橋本雅邦
1835–1908
川
川合玉堂
1873–1957
平
平山郁夫
1930–2009
東
東山魁夷
1908–1999
下
下村観山
1873–1930
安
安田靫彦
1884–1978
菱
菱田春草
1874–1911
伊
伊東深水
1898–1972
鏑
鏑木清方
1878–1972
千
千住博
1958–
山
山口晃
1969–
加
加山又造
1927–2004
河
河鍋暁斎
1831–1889
小
小林古径
1883–1957
松
松岡映丘
1881–1938
狩
狩野芳崖
1828–1888
小
小堀鞆音
1864–1931
松
松本楓湖
1840–1923
水
水野年方
1866–1908
速
速水御舟
1894–1935
田
田渕俊夫
1941–
西
西山翠嶂
1879–1958
高
高山辰雄
1912–2007
松
松井冬子
1974–
荒
荒木寛畝
1831–1915
川
川端龍子
1885–1966
上
上村松篁
1909–2000
今
今村紫紅
1880–1916
堂
堂本印象
1891–1975
山
山口蓬春
1893–1971
杉
杉山寧
1909–1993
村
村上華岳
1888–1939
天
天明屋尚
1966–
小
小杉放菴
1881–1964
中
中村岳陵
1890–1969
平
平福百穂
1877–1933
荒
荒木十畝
1872–1944
奥
奥村土牛
1889–1990
福
福田平八郎
1892–1974
川
川崎千虎
1837–1902
梅
梅津庸一
1982–
片
片岡球子
1905–2008
三
三瀬夏之介
1973–
勝
勝田蕉琴
1879–1963
吉
吉岡堅二
1906–1990
富
富岡永洗
1864–1905
尾
尾竹越堂
1868–1931
杉
杉戸洋
1970–
橋
橋本関雪
1883–1945
池
池田蕉園
1886–1917
稗
稗田一穂
1920–2009
邨
邨田丹陵
1872–1940
佐
佐竹永湖
1836–1909
小
小林永濯
1843–1890
山
山崎隆
1916–2004
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この解説は ArtNote 編集部が執筆しています。 誤りを報告する