ArtNote/美術運動/アール・ヌーヴォー
MOVEMENT

アール・ヌーヴォー

Art Nouveau
1890s–1910s ヨーロッパ 収録作家 35人

蔦が壁を這い、髪が渦を巻き、鉄柵が花の茎のようにしなる。世紀末のパリやウィーン、バルセロナの街角には、そんな曲線が突如として溢れ出した。アルフォンス・ミュシャが描く女性たちの髪は画面の外へ流れ出しそうにうねり、アントニ・ガウディの建築は骨のように有機的な柱で立ち上がる。それまでの美術が古代やルネサンスの形式を手本にしてきたのに対し、この運動は自然そのもの、とりわけ植物の生命力を装飾の源泉に据えた点で一線を画す。

背景には産業化への反発と、新しい印刷・鉄骨建築技術の普及があった。工場生産による安物の氾濫に対し、日用品や建築にも美を宿そうとする気運がヨーロッパ各地で高まる。ウジェーヌ・グラッセのポスター、エミール・ガレのガラス工芸、ゲオルク・イェンセンの銀器はいずれも、日常の道具を芸術の域に引き上げようとした試みである。ヴィクトール・オルタやオットー・ワーグナーの建築は、鉄とガラスという新素材を曲線装飾と融合させ、都市の表情そのものを変えた。

ウィーンではグスタフ・クリムトが金箔を用いた官能的な人物像で、装飾と絵画の境界を曖昧にした。カール・モルら分離派の画家たちも、既存の美術アカデミーの権威に背を向け、素材やジャンルの垣根を越えた総合芸術を志向した。カール・ファベルジェの宝飾細工に見る精緻な曲線も、同じ時代精神を映す。地域ごとに呼び名や表情は異なるが、直線よりも波打つ線を、模倣よりも植物や女性像を好む感覚は共通していた。

この運動は長くは続かず、やがて幾何学的なアール・デコに取って代わられるが、装飾と実用を一体のものと考える発想は、後のデザイン運動に受け継がれた。鑑賞する際は、絵画や彫刻だけでなく、椅子や食器、建物の門扉にまで宿る一貫した線の律動に目を向けたい。

この運動の作家

グ
グスタフ・クリムト
1862–1918
エ
エミール・ガレ
1846–1904
オ
オットー・ワーグナー
1841–1918
ジ
ジュール・シェレ
1836–1932
ル
ルイス・コンフォート・ティファニー
1848–1933
ル
ルネ・ラリック
1860–1945
ア
アントニ・ガウディ
1852–1926
フ
フランツ・フォン・シュトゥック
1863–1928
ヨ
ヨーゼフ・ホフマン
1870–1956
ヴ
ヴィクトール・オルタ
1861–1947
杉
杉浦非水
1876–1965
コ
コロマン・モーザー
1868–1918
テ
テオフィル・アレクサンドル・スタンラン
1859–1923
ウ
ウジェーヌ・グラッセ
1845–1917
イ
イシドレ・ノネル
1872–1911
ド
ドーム兄弟
ラ
ラモン・カサス
1866–1932
ル
ルシアン・ベルナール
1883–1972
レ
レイモン・サヴィニャック
1907–2002
武
武田五一
1872–1938
ア
アルフォンス・ムハ
1860–1939
カ
カール・ファベルジェ
1846–1920
カ
カール・モル
1861–1945
ケ
ケール・ハビエル・ルシニョル
1861–1931
ゲ
ゲオルク・イェンセン
1866–1935
バ
バーナード・ヴィレムソン
1911–1989
パ
パウル・シュートラール
1883–1945
ブ
ブラングィン, フランク・ウィリアム
1867–1956
フ
フレデリック・カーダー
1863–1963
ベ
ベンハミン・パレンシア
1894–1980
ヨ
ヨハン・トーン・プリッカー
1868–1932
ル
ルートヴィヒ・ホールワイン
1874–1949
レ
レオネット・カピエロ
1875–1942
後
後藤慶二
1883–1919
水
水島爾保布
1884–1958
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この解説は ArtNote 編集部が執筆しています。 誤りを報告する