ArtNote/美術運動/抽象表現主義
MOVEMENT

抽象表現主義

Abstract Expressionism
1940s–1950s アメリカ 収録作家 58人

抽象表現主義は、第二次世界大戦後のニューヨークに現れた絵画の動向である。それまで近代美術の中心はパリだったが、戦火を逃れた芸術家が多くアメリカへ渡ったこと、戦後のアメリカが経済的・文化的な自信を強めたことが重なり、美術の重心が大西洋を越えた。この運動は、その移動を象徴する出来事として語られる。

共通しているのは、画面を大きく取り、描く行為そのものの痕跡を残し、具体的な事物を描かないという姿勢である。ただし内実は一様ではない。絵具を床に広げたカンヴァスへ滴らせるポロックのように、身体の動きが画面にそのまま記録される方向と、大きな色面を静かに重ねて瞑想的な空間をつくるロスコやニューマンのような方向とがある。前者はアクション・ペインティング、後者はカラーフィールドと呼び分けられることが多い。デ・クーニングのように、抽象と人体像のあいだを行き来しつづけた画家もいる。地塗りをしない布に薄めた絵具を染み込ませるフランケンサーラーの方法は、筆触を消して色そのものを画面に定着させる道を開き、次の世代の色面絵画へ引き継がれた。夫や同僚の名前で語られがちだったクラスナーの仕事も、近年は独立した達成として見直されている。

背景には、シュルレアリスムの自動記述から受け継いだ「意識が介入する前の身振り」への関心があり、そこにヨーロッパの抽象絵画の蓄積が接続された。戦争の記憶を前に、具体的な形象では語れないものを扱おうとした、という読み方もされる。この動向が短期間で権威を得た背景には、批評家の役割も大きい。描く行為そのものを事件として論じる立場と、絵画は平面であることに徹すべきだとする立場が並び立ち、同じ作品が異なる言葉で価値づけられていった。

この動向は、絵画を「窓のなかの光景」から「観る者の前に立つ物」へと変えた。大画面は美術館で対峙したときに初めて意味を持つので、可能なら実物を、少し近づいて視界が絵で埋まる距離から見てほしい。何が描かれているかを探すのをやめた瞬間に見え方が変わる、というのがこの絵画の作法である。

この運動の作家

ヴ
ヴァシリー・カンディンスキー
1866–1944
ジ
ジャクソン・ポロック
1912–1956
ウ
ウィレム・デ・クーニング
1904–1997
フ
フランツ・クライン
1910–1962
ア
アルシル・ゴーキー
1904–1948
ジ
ジョルジュ・マチュー
1921–2012
バ
バーネット・ニューマン
1905–1970
ヘ
ヘレン・フランケンサーラー
1928–2011
サ
サム・フランシス
1923–1994
ク
クリフォード・スティル
1904–1980
フ
フィリップ・ガストン
1917–1980
リ
リー・クラズナー
1908–1984
ロ
ロバート・マザウェル
1915–1991
ジ
ジョーン・ミッチェル
1925–1992
ハ
ハンス・ホフマン
1880–1966
ア
アドルフ・ゴットリーブ
1903–1974
ジ
ジュール・オリツキー
1922–2007
ア
アド・ラインハート
1913–1967
ア
アーサー・ダヴ
1880–1946
ニ
ニコラ・ド・スタール
1914–1955
ジ
ジャック・ブッシュ
1909–1977
ウ
ウィリアム・ロナルド
1926–1998
ノ
ノーマン・ルイス
1909–1979
ハ
ハロルド・タウン
1924–1990
マ
マーク・トビー
1890–1976
菅
菅井汲
1919–1996
野
野見山暁治
1920–2023
グ
グレース・ハーティガン
1922–2008
ジ
ジーン・デイヴィス
1920–1985
ジ
ジョン・ホイランド
1934–2011
v
v.s.ガイトンデ
1924–2001
ア
アルマ・トーマス
1891–1978
ウ
ウィリアム・バジオーテス
1912–1963
ウ
ウォルター・ダービー・バナード
1934–2016
エ
エステバン・ビセンテ
1903–2001
エ
エド・クラーク
1926–2019
エ
エルンスト・ヴィルヘルム・ナイ
1902–1968
エ
エレイン・デ・クーニング
1918–1989
サ
サイモン・アンタイ
1922–2008
ジ
ジェームズ・ブルックス
1906–1992
ジ
ジャック・タワーコフ
1900–1982
ジ
ジャック・ホワイトン
1939–2018
ジ
ジョン・オルセン
1928–2023
ジ
ジョン・グラハム
1886–1961
ス
スタンリー・ウィットニー
1946–
ソ
ソニア・ゲクトフ
1926–2018
ダ
ダン・クリステンセン
1942–2007
テ
テオドロス・スタモス
1922–1997
ハ
ハーバート・フェルバー
1906–1991
パ
パブロ・パラスエロス
1916–2007
ブ
ブラッドリー・ウォーカー・トムリン
1899–1953
ポ
ポール・ジェンキンス
1923–2012
ホ
ホセ・ホラ
1931–1995
マ
マリア・エレナ・ヴィエイラ・ダ・シルヴァ
1908–1992
ラ
ラリー・ズォックス
1936–2006
ラ
ラルフ・ホッテア
1931–2013
ロ
ロビン・デニー
1930–2014
金
金光松美
1922–1992

いま見られる展覧会

会期終了まで
3日
開催中2026年度 II 「言葉を観る、美術を読む」
徳島県立近代美術館(〒770-8070 徳島県徳島市八万町向寺山 文化の森総合公園内) ・ 2026.07.11 – 2026.09.30
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この解説は ArtNote 編集部が執筆しています。 誤りを報告する