ArtNote/美術運動/象徴主義
MOVEMENT

象徴主義

Symbolism
1880s–1910s ヨーロッパ 収録作家 34人

ある画家は蛇を巻きつけた女の首だけを画面に浮かせた。別の画家は、白鳥に変じた男が眠る女に近づく場面を、宝石のような色彩で描いた。ギュスターヴ・モローの《オルフェウス》やオディロン・ルドンの奇怪な単眼の生物たちは、目に見える現実を写すことを放棄している。象徴主義の画家たちが追い求めたのは、風景や人物という「もの」ではなく、それらを通してしか語れない夢、死、欲望、宗教的な戦慄といった目に見えない領域だった。

この転換の背景には、写真の普及によって絵画が「正確に写す」役割を失いつつあったという事情がある。さらに世紀末のヨーロッパでは、科学と産業の進歩に対する不信も広がっていた。文学の世界ではボードレールやマラルメが暗示と象徴によって内面を語る詩を書き、美術はその手法を絵画に翻訳した。印象派が光と大気という外界の観察に情熱を注いだのに対し、象徴主義の画家たちは目を閉じ、内側にある不安や憧憬に形を与えようとしたのである。

地域ごとに異なる色合いを持つのも特徴である。ムンクは北欧の長い夜と孤独から、絶叫する人物や病んだ女性像を描いた。ハンマースホイは逆に、静まりきった室内に後ろ姿の女性を置き、音のない不安を漂わせた。ベックリンの《死の島》は死そのものを風景として提示し、クービンは悪夢を版画に刻んだ。ガッレン=カッレラはフィンランドの神話に、セレブリャコワはロシアの土地の記憶に、それぞれ象徴の源泉を求めた。手法も主題も一様ではないが、目に見えぬものを絵にするという一点で彼らはつながっている。

この運動はやがて表現主義やシュルレアリスムに道を開いた。作品を前にしたとき、描かれているものが何を意味するかを急いで解読しようとせず、まず色や形が引き起こす感覚に身を任せてみるのがよい。象徴主義の絵は謎解きの答えを持たず、答えの手前にある震えそのものを見せる絵画だからである。

この運動の作家

エ
エドヴァルド・ムンク
1863–1944
ギ
ギュスターヴ・モロー
1826–1898
フ
フェルナン・クノップフ
1858–1921
オ
オディロン・ルドン
1840–1916
ジ
ジェームズ・マクニール・ホイッスラー
1834–1903
フ
フェルディナント・ホドラー
1853–1918
ピ
ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ
1824–1898
ア
アルノルト・ベックリン
1827–1901
ヴ
ヴィルヘルム・ハンマースホイ
1864–1916
ヤ
ヤン・トーロップ
1858–1928
ジ
ジャン・デルヴィル
1867–1953
ア
アクセリ・ガッレン=カッレラ
1865–1931
マ
マックス・クリンガー
1857–1920
フ
フェリシアン・ロップス
1833–1898
ミ
ミハイル・ヴルーベリ
1856–1910
ジ
ジョージ・フレデリック・ワッツ
1817–1904
エ
エルンスト・ヨセフソン
1851–1906
フ
フィリップ・マリャーヴィン
1869–1940
ア
アルフレート・クービン
1877–1959
イ
イェンス・フェルディナン・ウィルムセン
1853–1958
カ
カルロス・シュヴァーベ
1866–1926
ジ
ジナイーダ・セレブリャコワ
1884–1967
ジ
ジョルジュ・ローデンバック
1881–1946
チ
チュルリョーニス
1875–1911
テ
テオドール・キッテルセン
1857–1914
ニ
ニコラス・レーリヒ
1874–1947
ハ
ハーラル・ソールベルグ
1869–1935
フ
フーゴ・シンベリ
1873–1917
ヘ
ヘレン・シャルフベック
1862–1946
ミ
ミハイル・シェミャーキン
1943–
ヨ
ヨアキム・スコウゴー
1856–1933
ル
ルドルフ・イェットマー
1869–1939
ル
ルドルフ・ブレダン
1822–1885
レ
レオン・フレデリック
1856–1940
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この解説は ArtNote 編集部が執筆しています。 誤りを報告する