ArtNote/美術運動/表現主義
MOVEMENT

表現主義

Expressionism
1905–1930s ドイツ 収録作家 55人

叫び声のような色彩と、歪んだ輪郭。ドレスデンで結成された「ブリュッケ」の若い建築学生たちは、目に見える通りに世界を描くことをやめ、内側で感じる不安や興奮をそのまま画面にぶつけた。エーリッヒ・ヘッケルやヴィルヘルム・モルゲナーの作品には、自然な色彩感覚を裏切る強い赤や緑、荒々しい筆致が見られる。彼らにとって絵画とは、外の世界の記録ではなく、心の状態を伝える装置だった。

この転換の背景には、急速に工業化し都市化するドイツ社会への違和感がある。人口が都市に集中し、機械のリズムが生活を支配するなかで、多くの芸術家は疎外感や神経の緊張を感じていた。さらに写真の普及によって「そっくりに描く」ことの価値は既に揺らいでおり、絵画は別の役割を探す必要に迫られていた。アフリカやオセアニアの彫刻、ゴッホやムンクの絵画も、単純化と誇張という手法に説得力を与えた。ミュンヘンで活動したアレクセイ・ヤウレンスキーやアウグスト・マッケは、色彩そのものに精神性を託す方向をさらに推し進めた人物である。

彫刻の分野でも同じ衝動が働いた。ヴィルヘルム・レームブルックの引き延ばされた人体は、写実的な均整を崩すことで、人間の弱さや悲しみをむき出しにする。第一次世界大戦を経て、この運動はより暗く、社会批判的な色を帯びていった。戦争の傷跡や都市の頽廃を描いた作家たちの仕事は、単なる様式実験ではなく時代への証言として読むべきものである。

表現主義が切り開いた「感情を歪みとして描く」という発想は、後の抽象表現主義や、アンゼルム・キーファーのような戦後ドイツの作家にまで及んでいる。会場では、色や形の「正しさ」を基準にせず、それがどんな感情の圧力から生まれたのかを想像しながら見るとよい。歪んだ線の奥に、当時の都市生活者の不安な視線が透けて見えてくるはずである。

この運動の作家

エ
エルンスト・ルートヴィヒ・キルヒナー
1880–1938
エ
エゴン・シーレ
1890–1918
ア
アンゼルム・キーファー
1945–
エ
エミール・ノルデ
1867–1956
ゲ
ゲオルグ・バゼリッツ
1938–
ジ
ジョージ・グロス
1893–1959
オ
オスカー・ココシュカ
1886–1980
マ
マックス・ベックマン
1884–1950
フ
フランツ・マルク
1880–1916
ア
アーサー・ボイド
1920–1999
エ
エーリッヒ・ヘッケル
1883–1970
ジ
ジュリアン・シュナーベル
1951–
エ
エリック・フィッシュル
1948–
カ
カール・シュミット=ロットルフ
1884–1976
ケ
ケーテ・コルヴィッツ
1867–1945
ア
アウグスト・マッケ
1887–1914
ア
アレクセイ・ヤウレンスキー
1864–1941
エ
エルンスト・バルラッハ
1870–1938
マ
マックス・ペヒシュタイン
1881–1955
マ
マルクス・リュペルツ
1941–
ベ
ベルンハルト・ハイジッヒ
1925–2011
ヨ
ヨルク・インメンドルフ
1945–2007
a
a.r.ペンク
1939–2017
パ
パウラ・モーダーゾーン=ベッカー
1876–1907
ブ
ブレット・ホワイトリー
1939–1992
マ
マリアンネ・フォン・ヴェレフキン
1860–1938
ヴ
ヴェルナー・ビュットナー
1954–
カ
カール・ホーファー
1878–1955
ガ
ガブリエレ・ミュンター
1877–1962
ダ
ダニエル・リヒター
1962–
ウ
ウィルヘルム・レームブルック
1881–1919
オ
オットー・ミュラー
1874–1930
ニ
ニコライ・アストルップ
1880–1928
ハ
ハインリッヒ・カンペンドンク
1889–1957
ハ
ハワード・ホジキン
1932–2017
ル
ルートヴィヒ・マイドナー
1884–1966
ア
アフェンディ・ラシド
1907–1990
ア
アルナルト・ライナー
1929–
ア
アントン・ファイスタウアー
1887–1930
ヴ
ヴィルヘルム・モルゲナー
1891–1917
エ
エドヴァルト・ムンク(版画)
1863–1944
オ
オットー・パンコック
1893–1966
ク
クリスティアン・ローフス
1849–1938
コ
コンラート・フェリクスミュラー
1897–1977
サ
サディクサイン
1930–1987
ジ
ジョージ・コンドー
1957–
ジ
ジョナサン・ラスカー
1948–
タ
タウト, ブルーノ
1880–1938
ハ
ハインリヒ・マリア・ダーヴリングハウス
1894–1970
フ
フランツ・ラジヴィル
1895–1983
ベ
ベルナール・ビュッフェ
1928–1999
ヘ
ヘルベルト・ベッカー
1894–1966
ホ
ホセ・グティエレス・ソラナ
1886–1945
マ
マックス・オッペンハイマー
1885–1954
リ
リヒャルト・ゲルストル
1883–1908

いま見られる展覧会

会期終了まで
4日
開催中2026年度 II 「言葉を観る、美術を読む」
徳島県立近代美術館(〒770-8070 徳島県徳島市八万町向寺山 文化の森総合公園内) ・ 2026.07.11 – 2026.09.30
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この解説は ArtNote 編集部が執筆しています。 誤りを報告する